
長岡市で生まれ、小中高の時代を見附市今町で過ごした埼玉県在住の現代美術作家の展覧会を開催。地元では初めてとなる個展では、抽象平面の大作を中心に展示します。
市川は高校卒業後進学のため上京しますが、関心は美術へとシフトしていきます。入学した創形美術学校では70年代の現代美術シーンに触れ、様々なジャンルの新たな表現を体感します。そして、20代の体験を批判的に踏まえつつ、抽象美術について深く考えていくことになります。初期の作品は、鉄板を素材とした立体を屋内外で展開、アメリカのミニマリズムの作家、特にドナルド・ジャッドの作品や考え方にインスピレーションを受けました。ジャッドの作品は、古いヨーロッパ芸術から離れ単純な形体の繰り返しから生まれる空間の変化を目的としていましたが、実はジャッドの言う「絵画的フォーマットからの離脱」という言説から、市川は逆説的に絵画の可能性を追究するヒントを得たようです。1994年 新潟市野外彫刻大賞で優秀賞を受賞した「風景の瞬間」発表後、市川の作品は徐々に平面的なものへと移行します。正確さと規則性のある幾何学形態に重点を置いた線と面の作品は変化を続ける一方、側面から見たときの変則的な立体感や色面には機知を感じます。絵画的でありながら立体も感じるバランスの均衡、鑑賞者に様々な思考を提示する市川の作品は、空間を浄化し清々とした場を作り出すことでしょう。